いな人の好い事ばかり云って居る人は、自分の首をちょんぎられても御礼を云うんでしょう。
馬鹿馬鹿しい。
ほんとに『阿呆《あほ》らしい』ってのは、こう云う事を云うじゃありませんか。
ああ、ああ。
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お金は、黒ずんだ歯茎をむき出して、怒鳴り散らした。
栄蔵にも、お君にも、「今月分」として十円だけもらって来たのがどれだけ馬鹿なのか、間抜けなのか分らなかった。
家の様子も知らないで、やたらに川窪を疑って居るお金の言葉に、栄蔵は赤面する様だった。
ああやって心配して、気合をかけて、病気をなおす人の名や所まで教えた上、痛んだら「こんにゃく」の「パっぷ」をしてやれなどと云って呉れたあの家の主婦に対して、あまり人を踏みつけた様な言葉を吐かれる度に、裏切って居る様な感じがして居た。
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「お前、そんなに川窪はんを疑うてやが、お前ならどうする積りなんえ?
「私?
私なら、きっきと毎月出すと云う書き物でももろうて来る。
「そんな事、出来ると思うとるんか。
人に金貸して、利息でも取り立てる様に書き物を取るなんて……
こっちは、出してもらう身分やない
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