蔵の話をした。
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「お君だって、あんな不義理な事をした事は何と云ったって悪いには違いありませんけど、病気で難渋して居るのを助けてやるのは又別ですからね。
親父だって、ああやって働けもしないで居るんだもの、どんなに気が気でないか知れやしませんよ、可哀そうな。
でも月々十円は中々苦しい。
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夫婦は相談して、とにかく一月分だけは明日渡して、栄蔵の村の者へ貸してあるものがあるから、あれを戻す様に尽力してもらって、入ったものの中から出した方が相方都合がいいときめた。
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「ああ云う病気は殆んど一生の病気なんですからねえ。
それをあの男は胸につくよりはいいなどと云って居るんですもの。
ほんとうにお君も惨めなりゃ、あの男だって可哀そうじゃあありませんか。
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田舎医者位、病気についての智識のある主婦は、いろいろ気を揉んで、どんな人にかかって居るのだろうとか、細まごました注意は姑などでとどくものではないなどと云って居た。
お君が居た頃から今に居る女中は、
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「お嫁に行ってもろくな
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