を察して、堪えて水仕事まで仕て居たけれ共、しまいには、眼の裏が燃える様に熱くて、手足はすくみ、頭の頂上《てっぺん》から、鉄棒をねじり込まれる様に痛くて、とうとう床についてしまった。頭に、濡手拭をのせて、半分夢中で居るお君の傍でお金が、
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「お前もう何《なん》なんだろう?
一人口が殖えると、又なかなかだねえ。
それにしても、あんまり早すぎるじゃあないかい。
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と、いやあな顔をして云ったのが、今でもお君の眼先にチラツイて、それを思い出す度《た》んびに、何とも云えない気持になって涙がこぼれた。
冷え込みだろう、と云って居たのが、三日たっても、四日立っても、よくなく益々重るばっかりなので、近所の医者に来てもらうと、思いがけなく悪い病気で、放って置けば、命にまでさわると云われた。
お医者の云った事は、お君に解《わか》らなかったけれ共、十中の九までは、長持ちのしない、骨盤結核になって、それも、もう大分手おくれになり気味であった。
流石《さすが》のお金も、びっくりして、物が入る入ると云いながら翌日病院に入れて仕舞った。
いよいよ手術を受ける時
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