てしまう。朝と夕方の清らかな露のうるおいとふるいにかけた様な空気とで育って行く様子はピリリッとした権しきのあるかしこい頭をもった女のようだとつくづく思われる。

 東京に沢山ある町のその一条毎にその特有のにおいが有る。それも気をつけてかぐ様にしてあるくのが私はすきでわり合に沢山の町の香いを知って居る。
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 小石川の宮下町の近所は古い錦の布の虫ばんだ様な香がする。
 銀座の竹葉のわきの通りは、だいだいのような香がする。そして混血児を見るような感じがする。
 根津の神社のわきの坂は、青っくさいようなモルヒネのような香がする。
 巣鴨ステーションの近所はもちのこげたような香がする。そいであすこいらの小家がみんなかびたもちで目に見えない大きなさいばしがそれをあみの上にのせてあっちにやったりこっちにやったりして居るように思われる。
 根津のところから西片町にぬける奥井さんの細い通り露路はおばあさんのあたまのあぶらの様な香がする。
 林町の裏町の家の間のせまいつきあたりの様な町があるとこは、おせんこくさい様な香がする。それは、そこは小家が沢山ならんで居て大抵そこにおばあさんが
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