にも仲よさそうにして歩いて居る。こうした気持をもって居る一人は私、も一人はおけいちゃんである。
「私もうこんなとこいやだ、どっかもっとにぎやかなとこへ行かなくっちゃあ」
 おけいちゃんはそんな事を云い出した。
「ちっともそんな事はありゃあしない」
 私はお敬ちゃんの手をにぎって、細い道を縫って歩いて居る。二人の下駄の音の外には何にもきこえない、一言も口をきかずに手を夢中でにぎりあったまんま、まるで気の狂った様に歩いて行く。
「そんなにいじめずにサ、ネ、別んとこへ行きましょう。私もう我まんが出来ないんだもの」
 立ちどまっておけいちゃんはあべこべの方に私の手をひっぱりはじめた。私も一緒にたちどまっておどおどした様な子供子供した御敬ちゃんのかおを見つめる。思わずうす笑いが口のはたに浮ぶ。
「ほんとうになんだか気味が悪い人だこと、それに今日はいつもにもまして変な様子をして」
 私の見つめて居るのをさける様にわきを見ながら云って居る、フッと私の心ん中で「今日は私の一番仲の好いこの人をいじめて見よう」こんなむほん気が起った。
「私ここが大好きなんだもの、こんないいところってありゃしない」
「何故
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