若し私のわきに私より小さな妹だの弟だのが居たら、訳もなくっても大きなこえで叱ったりつきとばしたりしたかもしれないほどムラムラして居た。
「せめてM子でも来ればいいのに……」
この頃一寸もたよりをよこさないM子や、あとあしで砂をける様にしてそむいたK子の事等が身ぶるいの出るほど腹立たしく思われた。
「M子のたよりをよこさないのや、来ないのは、私は快く許してやるけれ共、Kのそむいたのがどうしてゆるしてやれるもんか……」
わけをも云わずに毎日会う毎ににげて居る様な様子をするK子がたまらなくにくらしい。
「あの人と私は、どうせ違ったものになってしまうんだからかまうもんか……
あの人は云いなり放だいに奥さんになって子供をポカリポカリと生んで旦那に怒られ怒られて死んでしまうんだ。それよりは私の方がまだ考え深い生活をして行かれるに違いない。
マ、いいさ、どうせ人間同志のする事だ。たかがきまって居る」
私はまけおしみの心でこんな事を考えた。
私は一度妙な様子をされた人にこっちから頭をさげて「どうぞネ」なんかと云って又仲良くしてもらうんなんかって事はしたくない人間なんだから……
独りぼっち
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