歌声よ、おこれ
――新日本文学会の由来――
宮本百合子
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【テキスト中に現れる記号について】
《》:ルビ
(例)足の萎《な》えた
[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(例)[#地付き]〔一九四六年一月〕
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今日、日本は全面的な再出発の時機に到達している。軍事的だった日本から文化の国日本へということもいわれ、日本の民主主義は、明治以来、はじめて私たちの日常生活の中に浸透すべき性質のものとしてたち現れてきた。
民主という言葉はあらゆる面に響いており、「新しい」、という字を戴いた雑誌その他の出版物は、紙の払底や印刷工程の困難をかきわけつつ、雑踏してその発刊をいそいでいる。
しかし、奇妙なことに、そういう一面の活況にもかかわらず、真の日本文化の高揚力というものが、若々しいよろこびに満ちた潮鳴りとして、私たちの実感の上に湧きたち、押しよせてこないようなところがある。これも偽りない事実ではないだろうか。
この感じは、新しく日本がおかれた世界の道にたいする懐疑から生じているものでないことは明かである。われわれ人民が、理不尽な暴力で導きこまれた肉体と精神との殺
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