歌集『集団行進』に寄せて
宮本百合子
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【テキスト中に現れる記号について】
《》:ルビ
(例)三十一文字《みそひともじ》
[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(例)歌人[#「歌人」に傍点]でない者にも
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『集団行進』をいただき、大変に興味ふかく、得るところも多く拝見しました。巻頭の序文によると、この集は最近一年間において短歌をつくる労働者作家が非常にふえたことを一つの特徴として示しているとのことです。
この一年と云えば私が不自由な拘禁生活を自身の深い経験の一つとして過した月日であり、その間に外では、短歌の形で自分たちの生活の感情を表現しようとする意志が勤労階級の中から高まって来た月日であったと考えると、私にとってはまことに意味深い示唆が与えられます。この一年間の私たちの生活というものは、歌人[#「歌人」に傍点]でない者にも何かの形でその心持をうたわずにはおれない思いをさせる程のものであったと云うことが出来ましょう。今日の現実は、風流なすさびと思われていた三十一文字《みそひともじ》を突破して、生きようと欲する大衆の声を工場から、農村から、工事場・会社・
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