守備兵のロマンティックな短篇を、シートンがその筋のまま物語っていることである。コフマンのこの本も猿が人間生活の感情にある理解をもつことは語っているが、アフリカの牝豹が守備兵を恋するというようなことは、科学の見解に立つ動物学者に肯定さるべき現実だろうか。シートンの生涯の努力がこの一つのために決して少くない信用を喪わせられていることを遺憾に思った。改造文庫で出ているジャック・ロンドンの「野生の呼声」や「ホワイト・ファング」は犬や狼を描いた文学作品の出色のものであるし、キプリングの「ジャングル・ブック」(岩波文庫)もなかなか豊かな動物と人間の絵巻をひろげている。ハドソンの「ラプラタの博物学者」(同上)は、野生鳥類の生彩に溢れた観察、記述で感銘ふかいものである。「日本の鳥」(冨山房百科全書)は中西悟堂氏によって、どのような日本独特の鳥とそれに対する心を描いているのだろうか。
コフマンは、猿と類人猿の話につづく次の章で変った人種の話の項を展開しているが、私たちはこれらの部分では、おのずからダーウィンの「種の起源」(岩波文庫)と「人及び動物の表情について」(同上)という同じ科学者の感興つきない研
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