参加するばかりか、中野は三十年間転々としてアメリカであらゆる労役に従事していた間に、鉱山の大ストライキにプロレタリアとして夜も眠らず働いたことがある。なおかつ現在では自分の周囲におけるアメリカの子供の中からピオニイルを養成しているというのであるから、おそらく日本移民労働者の一人として、アメリカ共産党に組織されているのであろう。
「亀のチャーリー」一篇を読んで最も強く印象されることは、亀のチャーリーという中年の男が全く孤立的に書かれていることである。生活的な面では住んでいるアメリカのプロレタリア大衆とも、故国日本の革命的大衆ともなんら切実な交流を持っていない。ポッツリ切りはなされている亀のチャーリーという男が、ニューヨークには、ほかの日本人労働者も学生も商人もいるであろうのに、それらとはちっともかかわりなく、またアメリカの労働者、その前衛とも何の有機的結合をも示さず、ひたすらアメリカの子供に向って公式的な宣伝教育をしてはせっせとピオニイルにしてゆくことが書かれている。――これは全く著しく変であると思った。
ピオニイルの組織は誰でも知っているとおり、どの国においてもプロレタリアートの指導
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