い連れの身繕いを手助[#「助」に「(ママ)」の注記]ってやったり、羽根をしごく次第《ついで》に一寸強く引っぱって見たり、擽って見たりした。
二羽は充分めかし込んだ。
出来る丈美くしくなった。
そして又、意気揚々と歩き出したのである。
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「どっちへ行きましょうね。
「向うへ行って御覧、うんそうそうまっすぐの方へ。
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二つの影は、かたい地面の上に縺れ合った。
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「良い晩だわねえ。
「ああほんとにさ。一つ飛んで行こうか、
随分好い気持だろうよ。
「さあ、歩いた方がいい事よ此那好い虫が居るんだもの。
あら! まあ御覧なさい、早くいらっしゃいよ。
何て居るんだろう。
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茶っぽい小虫の群が、草の根元にかじかんだ様になって居るのを雌鴨は見つけたのである。
彼女は思い掛けない発見物にすっかり心を奪われて仕舞った。
そして雄鴨とはまるで、何の関係もなく独りでズンズンと、わき道へそれて行って仕舞った。
後に一羽とりのこされた雄鴨は「ああ危いなあ」と思わずには居られなかった。
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