AとYとの感情の故にどうこうと云って、Aが惜しいのではないが……さて、……煙草の煙の最後の渦が消えたような心持とでもいうか。
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〔欄外に〕
Aの性格に対して、※[#「Y+Y」、497−13]好意は大して持たない ガンコなところ 自分の云いたいことしか云わないようなところ。
こせつく口やかましいところなど
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四月
恋、字の通りこい、あるものを追う、なきものを追うのが恋か という心地
わがものにならぬものをものとせんとつとめるまでの ひかるる心 恋
二つの愛
※[#「Y+Y」、498−2]
対手はひとりでよし
しかしその人が日々に新たな心の弾み、欲情、熱中をもって自分との生活をやってくれないとものたりなくなる心地
わかれて居て淋しがるのもよいと思うようになる
一人の対手に多くをのぞむ性質
Yは、一人からはその人の与えるものしかもとめず、
つまり、妻君は落付いて、貞潔であることをのぞむ。家庭は家庭、浮気は浮気、それはこれと別という心持。
※[#「Y+Y」、498−11]そのために、自分の裡にあるいろいろのものも、あるままに買って貰えぬ不満あり。
然し、Yの心持の方が自然的[#「自然的」に「人間的」の注記]だ――現実的だという意味に於て――※[#「Y+Y」、498−12]の心持、幾人も持って、やってゆくだけの腕がないので、腕がないくせに心持だけ複雑な結果の虫のよい欲望だ。
五月
那須にて。※[#「Y+Y」、498−15]
何かアンニュイを感ず。内部的に不調和で、生活に対しリボルティングになって居る。
秀雄居る
何かの話の間に※[#「Y+Y」、499−2]
「私段々Yが嫌いになって来る」と云う。冗談めかして云って居るが底に一種のビタアネスあり。
Yそれを感じ、不機嫌。いろいろ云い、※[#「Y+Y」、499−4]、泣く、何だか生活の淋しさを感じてなり、すべて馴れる、フレッシュネスを失う、習慣になる、その淋しさなり。
Y、※[#「Y+Y」、499−6]を抱き、
「さあ、泣きな、べこや
長崎を思い出して御覧――お寺のところ――」
優しく優しく云う。※[#「Y+Y」、499−9]、その優しさに泣き、和らぎ眠る。
○Yは刹那的生存だ。
故に※[#
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