関係して居たことまですっかり話す。
 巡査は、敏腕と云われる、二十七八歳の生若い、ものを知らない、巡査を天下一の仕事と心得て居る奴、風紀上など些か微力をつくしたい、と云いたいのでしつこくきく。女房困り、前から気が有った円覚寺の寺男と一緒にさせることに急にし、その男をよぶ。眼玉の飛びぬけたような、口をあいた馬鹿。形式の見合いをさせ、おなかのことも承知でいよいよよいとなる。男曰く
「じゃあこれから毎晩来るが、あなた、と呼ぶんだぞ」
 馬鹿女うれしそうに
「はい」

     ○肝癪のいろいろ

 或中尉、ひどいカンシャクモチ
 何かをカンにさえ、いきなり庭にお膳を放り出し、膳がひょいと立つと、それがシャクで、わざわざ出て下りて、ふみつけこわす。
  又
 同じ人
 ひすけた風呂桶にどうしても、水をはれと云う、だめです、いやどうしても一杯にしろ、と駄々をこねる。
 きりょうのぞみでもらわれた十七歳の妻、それがたまらず逃げかえる。
 実家近くで、近所の子を抱いて居ると、馬にのって来かかった元の夫――中尉、ふいと馬を下り、抱いて居る子をあやした。愛し(妻を)未練があったのだ。然しその十七の女、そ
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