高い空にある。変な、ぼんやりした悲しいような心持。いくつ位だったろう、八つか九つか?
日々草
日々草から、キハツ性のゼラニウムの葉から立つと同じような香いがした。根を熱湯につけてさすと一日一日、新しい花がさくと云ったが咲かず、二日目に、葉ばかりになった。
柳やの女中
薄馬鹿で色情狂、
甚兵衛の家に肴をとどけて来て、かえりになかなか柳やへ戻らず。女房丁度雨がふり出したので傘をもって迎いに来る。行き違いになったのだろうと云ってかえる。その間に女は、線路のどこかで、人足に――土方に会い、お嫁に来ないか、女房にならないかと云われ、そのまま一緒に夕暮二三時間すごす。すぐどうかなったのなり。
この女、人を見れば、お嫁にゆきたい、世話をしてくれないかという。
翌日、あの土方と約束したから、と云って行く。土方居ず。それから又数日後土方と会い暫く一緒に暮す、土方転々として去ったので、又柳やに戻る。
そして、或朝しらしらあけに、隣の男のところへ夜這いし、かえるところを巡査に見とがめられ詰問され、姙娠五ヵ月のことから、その子はだれの子かわからないことから、鎌倉で巡査と
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