ヲざるコケット
 ○「男は、女を愛す、と平気で云う。女だって同じと思うわ、それを何故私は男の人がすきよと云えないの、云っちゃあいけないのでしょう。」
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〔欄外に〕母となる性の特質、男にある浄きものへの憧れ、女に娼婦型母型
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 二つあるように云うが、男の人の要求が大体その二つに別けられるので、女の方は、それと順応して、一方ずつの特性を強調するのではないの。
 男は一人で二つ持つ。この傾向をね。
 女は二つ持って居ても、一方をどちらか殺す――教養だの、必要だの――対手の男に応ずる本能からだの。

     彼女(私)

 はこういう女だ。
 感じが敏く、又気が弱いところもあって、会う人、つき合う人にじき影響される。(一時ほんの一時。)ああ思い、こう考え、いろいろの憧れをもつ、しかし最後にはその中から、自分に本当にしっくりしたものを選び出し、選んだと信じたら、其をやり通す強情さをもって居る。

     原あさを

 仙台かどこかの豪家の娘
 母一人、娘一人
 歌をよむ。
 ひどく小さい、掌にでものりそうな女
 男なしに生きられぬ女
 さみしさか
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