]わんとき! 三十六度! そんなことがあるかいな」
「だっておかはん、あて勘定してたもん」
 哀れ。考え違い。
 舞姫などこのように、情慾も、好奇心もないのに、そういう目に会う。
 のち、男にひかされ、ひどい生活を五年する――男、口入の一寸よいの。いつも、百や二百の金は財布にある、但人の金、女そんなこととは知らずにかかる。ちゃんと退引せず、男のところへ逃げ、少しずつ金を入れるというやり方。
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〔欄外に〕
 ○大して腕もなし。
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 そのうちYが知る。
 Yのところには金の都合のつくことがあるので、それも心だよりで逃げて来る。
 Y 医者にかよわせ、歌沢をならわす。よい天分、然し芸で立つ気はない。男、弟子の一人ですいて居るらしいのを知りもちかけ、金を出させようとす。
 男、心のことと思う。ソゴし、駄目。(宇治の花屋敷。男、女と山の中に入ってもよいという。女それを望むに非ず。悪たれて本音をはいてしまう)
 友達であった女、神戸に鳥屋をして居、それを、男のために売りたい。相談して岡田をひっかけ買わす。失敗
 又東京に来る。やけ。
 わるい男(根津
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