犬はいけない!」体が白いからなおいけず。自分、片手で顔を覆い動けず。創にさわるかと思うと手も出ず、又哀れで。
 その犬の心持を思いやる、きっと人がこの頃自分をきらうことを悲しく、いぶかしく感じるであろうと。

 二十八日、ひどく暖い。そとに出て見る、表山、山、杉木立、明るい錆金色の枯草山、そこに小さい紅い葉をつけたはじの木、裏山でいつも日の当らないところは、杉木立の下に一杯苔(杉ごけやぜにごけ)がついて居、蘭科植物や羊歯が青々といつも少しぬれて繁茂して居る。
 山が多く、日光が当るあたらない、いろいろあるので、山にも変化がある。瑞巖寺で見た本阿彌の庭のように、一面芝山で何もなくところどころに、面白い巖の出たのもあり。
 ○南画的な勁い樹木(古い椎)多し、古※[#「木+解」、第3水準1−86−22]、榧、杉(松は尠し)◎南天、要、葉の幅の広い方の槇、サンゴ樹(赤い実がついて居て美し)それから年が経て樹の幹にある趣の出来てた やぶこうじの背高いの(千両)南天特に美し。
 ○川ふちの東屋、落ちて居た椎の実、
「椎の実 かやの実たべたので」
 かやの実とはどんなものだろう
 ○変な五人づれの万
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