黷驍ニ思い、子供に何でも先に試めさせる。)妻、亭主にかした金(六〇〇円)をかえしてくれなくてはいやとケンカをし、フイリッポフのところに逃げて居る。フイリッポフが夫のところへ行ったら良人はかえるものと思って居た(いつものケンカと思った)
女いや(高等掛が来て、日本の女なんか決して其那ことはない)
ラシャ売り、それがレッシャウリときこえた。Yに。
日本の女から片仮名の手紙が来る。それをフイリッポフによんで貰いに持って来る。女と見れば、しっかりいつまでも手を握ったりして居る。きたない髭面、目くぼみの背低。
フイリッポフ、ドンジュアンと呼ぶ。
前に、シベリアで知り合った日本人の女房でロシア人、亭主より先にかえって来た、女の友達でフーシェ嬢という女の拳闘家あり、そんな男つまらぬと云って、同じ仲間のボクサーをとりもつ。二人出来る。亭主がかえって来たので東京に来たが男から手紙が来てバレル、女身持ち。子を産む。その子と女、フイリッポフのところへあずける。女、男によび出されては子供をフイリッポフにあずけて出てゆく。フイリッポフ貧しい中から子供に粉ミルクをかってのませた。
「今ぐらいに暮して居れば、その子もらって育てたが、貧乏でしたから駄目だった」
○二階借り居る家は建築業、下にいつも婆と小さい娘六つ位のこまっちゃくれ「分りましたか、分りましたか」大人の言葉をつかう。赤坂の色街のところのそういう人達の心持とロシア人の生活との錯綜。
○宣教師 独逸人 赤ら顔の髪なし。
友人の宝石を売ルタメに呼んだ。日露懇談会で知ったとき、フイリッポフに信仰談をした。フイリッポフ信仰よりパンが欲しい。ダイアモンド八〇〇円に売ル
(日本語が出来ないから表現されないが、宗教にはよい理解をもって居る。)その男(ロシア語でもわかりません)
[#ここから1字下げ]
〔欄外に〕
ロシア人の気違いになった細君を病院へ入れるためにフイリッポフ手紙を書く。
[#ここで字下げ終わり]
底本:「宮本百合子全集 第十八巻」新日本出版社
1981(昭和56)年5月30日初版発行
1986(昭和61)年3月20日第2版第1刷発行
初出:「宮本百合子全集 第十八巻」新日本出版社
1981(昭和56)年5月30日初版発行
※底本は、物を数える際や地名などに用いる「ヶ」(区点番号5−86)を、大振りにつくっています。
入力:柴田卓治
校正:土屋隆
2007年8月13日作成
青空文庫作成ファイル:
このファイルは、インターネットの図書館、青空文庫(http://www.aozora.gr.jp/)で作られました。入力、校正、制作にあたったのは、ボランティアの皆さんです。
前へ 終わり
全9ページ中9ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
宮本 百合子 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング