#濁点付き片仮名ワ、1−7−82]で牝鶏は卵を生まない。――から木箱に入った卵が来る。
一年目に又病って、今思い出すものは日本の海辺でも素麺でもない。日本の長い椽側だ。秋の清澄な日ざしがその椽側に照り、障子が白く閉って居る。障子に小枝の影がある。微かに障子紙の匂いを感ずる――
食べたいものの第一は支那料理の白菜羹汁だ。それからふろふき大根。湯豆腐。
特徴ある随筆の筆者斎藤茂吉氏は覊旅蕨という小品を与えた。
同行二人谷譲次氏は新世界巡礼の途についた。そして Mem[#「em」に傍線] タニが女性の適応性によって、キャパンの流行巴里料理を通じ熱心に one of them たろうとする時 Mr. タニは更に一層の熱をもってロンドン日本料理店献立表を報告した。
ヨーロッパ人の云うところの soyu(醤油)や食える木の端(鰹節)を米とともにいさぎよく――海峡の彼方へ置いて来た。
自分もこうして遂に些かながら、味覚郷愁を洩すことになった。
それにしてもラフカデオ・ハーンは、彼の幾多の随筆力のどこかに美味なアメリカのチキンポットパイについての感慨をのこして居るであろうか? 神戸の生垣にもカタツムリは這って居たろうがそれを見てロチの心臓は平静であったろうか?
ブラジルでコーヒー畑の間を歩いて居る裸足の日本海外移民の魂には消えぬ望郷がある。日本にしかないソーユが構成した生理的望郷がある。ワシントン市在留駐米日本大使の知らぬこれは強烈な感覚的思慕だ。(大使館には 日本の塗膳とその上に並べる皿小鉢を満す料理人が居るであろう。)北緯四十*度から**度の間に弦に張られた島 日本が、敏感に西からの風、東からの風に震え反応しつつ、猶断然ユニークなソーユ
○人間がこの世に生きる人としての価値は、その人にどんなことでも――恐ろしいこと、けたはずれなことでも話せるかどうかという点にある。「尤も」以外にどの程度まで拡張して居るかということだ。
芥川龍之介に向って馬鹿なことは云えなく感じた人は一人ではあるまい。芥川に人世に対する好みがあって、愛の少なかった所以だ。
○リアリストとしてのレムブラントからレムブラントのリアリズムへの飛躍
○病気して居ると
一、早く朝になるのがよい。わるいときは六時頃でも。
一、きれいで元気な女を見たい。
○日光がうれしい。
○緑の芽が出て育つ
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