是は寧ろ日本字で書くより ロシア字になおして、衛生大臣セマシコフに見せたい答だ。
公平に云えば 我が呪われた胆嚢は2/10だけ既に日本トキョーに居たうちにわるかった。然し胆汁のはけ口を逆行してそのもち主を呻らせる炎症をおこすバイキンは、СССРモスク※[#濁点付き片仮名ワ、1−7−82]市の食堂が一ヵ年間補てん提供したのは事実だ。
日本女の胆嚢に入ったバイキンは、あらゆる瞬間に、ルバシカに包まれたモスク※[#濁点付き片仮名ワ、1−7−82]の市民《グラジュダニン》の胃にも侵入しつつある。モスク※[#濁点付き片仮名ワ、1−7−82]全住民の幾割が衛生的な家庭の食事にありついて居るであろうか。
「女性が台所にとじこもって居る間、社会革命は完成されないであろう」
СССРは過度姙娠、育児の負担から女性を解放すると同時に、戸毎の大小の厨炉の前から女を解こうとした。集会に於て勧告するであろう
「我等新社会*の一市民は、各自の精力を最も有益に利用することを学ばなければならない。二杯のスープと二皿のカツレツの為に主婦が半日石油コンロの前に立って居なければならないという必要がどこにあろうか」
モスク※[#濁点付き片仮名ワ、1−7−82]夕刊新聞所載 ストロー※[#濁点付き片仮名ワ、1−7−82]ヤの閉店時間 モスク※[#濁点付き片仮名ワ、1−7−82]のストロー※[#濁点付き片仮名ワ、1−7−82]ヤが僅にセントルで十二時まであるだけであとは八九時にしめてしまうため夜勤の労働者が熱い обед をたべられない
モスソヴェートは附近の労働状態を考慮して閉店時間の延長を許可するであろう。
対外文化協会発行のパンフレットは 新しい共同厨房の蒸気釜の写真をのせる。
「食う準備」は人類が獣の皮を腰に巻きつけて棍棒と石でマンモスと戦った時代からの問題であった。
スパルタ以来最も台所から解放された市民はモスク※[#濁点付き片仮名ワ、1−7−82]と New York に発見されるであろう。最後にして最大の問題はこの社会的釜から体内に送られる不用なるバイキンを如何にして撲滅するかという点だ。
○
薄緑色の壁。紅いシクラメンの鉢の載って居る円卓子がある。窓枠が古いので一月の日光とともに室内を空気が流れた。シクラメンの花がゆれるのでそれがわかる。鉢の側――右
前へ
次へ
全13ページ中10ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
宮本 百合子 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング