は妻をますます家政の守りとして求め、その求めてゆく心にいつしか日本の社会の古い古い陰翳が落ちて、新しい世代の賢さから生れる家政上手に信頼をつなごうとするより、そのことではむしろ旧套にたよった守勢をとる。
 両性の向上ということから、女性が社会に向って示す積極な態度を評価することさえも、今日の若い世代の男性にとってただある時期のこのみに過ぎないものとなっているとしたら、歴史を推しすすめる世代の意義をどこに見たらいいのだろう。
 あらゆる面から若いひとたちは、社会的な活動に入ってゆくことで、自分たちの社会観をひろく強くして行かなければならないと思う。どっさりの異性の知人というものが、あるいは同僚があるような公共的な生活が先ずあって、そういう土台からもっと私的なこまかい条件の加わって来る友情も生れる空気が求められるべきだと思う。異性の友情という、どことなし従来の婦人雑誌のトピック向きな空気の低迷した隅からぬけ出して、もっと心理が強健で、もっと持続性と自主性とをもった両性の友情がはぐくまれて行くことを、私たちは自分たちの生活の現実としての希望としているし、努力しているのだと思う。[#地付き]〔一九四一年二月〕



底本:「宮本百合子全集 第十四巻」新日本出版社
   1979(昭和54)年7月20日初版発行
   1986(昭和61)年3月20日第5刷発行
底本の親本:「宮本百合子全集 第九巻」河出書房
   1952(昭和27)年8月発行
初出:「婦人画報」
   1941(昭和16)年2月号
入力:柴田卓治
校正:米田進
2003年5月26日作成
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