いやさもきつく感じている半面で、女同士の友情を営む可能をはぐくまれている。自分たち女というもののこの社会でのありようというものが、働いている女にはまざまざとした分りかたで分って来る。生きて行く場面で互が苦しく競り合うものとして現れているとすれば、今日目の前にそういう現象を持ち来している社会的な動機への洞察がいつかよびさまされずにいない。女としての境遇に処するということのうちに、おのずからその境遇に向う自身の態度というものが加わって来て、その積極な自覚は、新しく見開かれた眼差しで、ぐるりの女同士の暮しぶりを見直させるであろう。そこにやはりあちらでもそのような視線をもって周囲を眺めている一対の黒く若々しい眼が出会ったとき、単なる知り合い以上の共感が生じる。そして、やがて友情が芽生え、その友情はあらゆる真摯な人間関係がそうであるとおり、互の成長の足どりにつれて幾変転し、試され試し、幾度か脱皮してその人々の人生へもたらされて来るのである。
 境遇が同じようだというだけでは、まだ真の友情の生れる条件に欠けているということは、実に意味ふかいことであると思う。境遇に向うその人の一貫した生活態度という
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