も直ぐ湧く様々の感想があろうと云うものである。
現実の生活環境から超絶したものの観かた、感じかたは出来ないのであるから、国際ペンクラブの大会で討論されたという(B)の一項目をしげしげと眺め入って、そこに今日の日本文化人の渇望がいかにはげしく照りかえしているかという事実、同時に実際上の困難がこれ又いかに尠くないかということを痛感するのは、ただ数人の日本ペン倶楽部代表者たちだけではないであろう。
大会では積極的に、翻訳以外にどういう方法で、文化の世界化を援助すべきか、というところから出発している。だが周囲の現実は遙にそれ以前と云おうか、先行的な条件で制約されてしまっている。先ず、各国[#「各国」に傍点]の文化、批評を活溌に交換するために必要な雑誌や書籍類の自由な国際的購読が今日では一般人にとって困難になって来ている。一般生活に必要がないと認められる種類の新聞や本などというものは手に入れ難く、しかもその必要でないという結論は、決して一般の読書人・文化活動者の具体的な多数決によるものではないのである。
文学に関する国際批評の水準をたかめ、且つそれを豊富強力、進歩性に富んだものにする必要は
前へ
次へ
全7ページ中2ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
宮本 百合子 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング