最初の社会主義社会が生んだ文学として、値うち高い成果を示している時、婦人作家たちは、共同の戦線に立ってまた独特の筆致と着眼とで、プロレタリア文学の発展に参加した。
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(一九四九年一月加筆)
一九三一年、十月、十一月、十二月とかかれたこの文章はここで終っている。まだあとのつづきがあるらしい調子で、しかしここで終っている。もしつづけて書いたとしたら、どんなことが書かれるべきであったろうか。それは、これらの婦人作家たちが労働組合の文学サークルや赤軍の文学サークルで、指導者としてどんな風に活動しているか、ということについてだったろうと思う。それから若いコムソモールの男女から、労農通信員《ラフセルコル》の中から、わかて[#「わかて」に傍点]の作家が生れはじめて来ていることなどについてであったろうと思う。アンナ・カラヴァーエ※[#濁点付き片仮名「ワ」、1−7−82]は一九三〇年にオソアビアヒムの文学サークル指導をしていたし、同じ年赤軍の文学サークルの作った戯曲「第一騎兵隊」を完成上演させるために努力した。
当時からいままでに、ただ、二〇年がすぎたのではなかった。ナチスの侵略に対してソヴェトの全人民が、世界の平和と社会主義の祖国を防衛した第二次世界大戦の防衛戦において、ヴェラ・インベルもカラヴァーエ※[#濁点付き片仮名「ワ」、1−7−82]も飛躍的な経験をした。インベルの「日記」はレーニングラードがナチスの包囲線を戦いぬいた記録として注目すべきものだと云われている。二〇年前に名も知られていなかった女詩人、婦人作家が、一九四〇年以後に活躍している。ワンダ・ワシレフスカヤの「虹」は幸い日本にも翻訳され、その映画を見た人も少くない。わたしたちは、一日も早くこれらの新作が紹介されることを待っている。[#地付き]〔一九三一年十―十二月〕
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底本:「宮本百合子全集 第九巻」新日本出版社
1980(昭和55)年9月20日初版発行
1986(昭和61)年3月20日第4刷発行
底本の親本「宮本百合子全集 第六巻」河出書房
1952(昭和27)年12月発行
初出:「女人芸術」
1931(昭和6)年10〜12月号
入力:柴田卓治
校正:米田進
2002年10月28日作成
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