出ていないのだ。然し、今日の地球上の情勢は、二つの世界、プロレタリア・農民インターナショナルの結成と、ファッショ化した世界ブルジョアの過渡的協力との対立をますます激化させつつある。
プロレタリア文学は、当然、内国的主題をいよいよ具体的に国際的なプロレタリア・農民解放運動全般との結びつきにおいて深化させて行くとともに、一方、次第にこの「転換時代」に類する作品、又は、紹介的役割をもつ「ズラかった信吉」の更に数段成功的な作品が現れる可能が十分ある。
内国的主題において国際的要素が強まるばかりではない。国際的主題そのものの発展が、プロレタリア文学の領域における主題の多様化にある功献をする時代が来ていることはすでに明かだ。この希望と見とおしで、われわれは一層活溌に、達成へ向っての勝利的自己批判を必要とする次第だ。
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(付記。ファッシズムに対して十分の抵抗を持ち得ない社会民主主義文学の中で国際的主題はどんな歪んだ形で取扱われているか。それについては別稿で書こうと思う。)[#地付き]〔一九三一年十月〕
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底本:「宮本百合子全集 第十巻」新日本出版社
1980(昭和55)年12月20日初版発行
1986(昭和61)年3月20日第4刷発行
底本の親本:「宮本百合子全集 第七巻」河出書房
1951(昭和26)年7月発行
初出:「読売新聞」
1931(昭和6)年10月16、17、20〜22日号
入力:柴田卓治
校正:米田進
2003年1月16日作成
青空文庫作成ファイル:
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