下げ]
サッカレ
ディケンズ(「現代史の裏面」)
バイロン(「※[#「鹿/(鹿+鹿)」、第3水準1−94−76]皮」?)
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        ブルターニュ

 木菟党をよむ。深く感動した。今日、ヨーロッパ地図の上で、人間の理性の地図の上で、ナチス侵入に総反撃を加えつつあるブルターニュのマーキの人々の活躍の価値を思い合わせて。
 木菟党は、大革命時代に王党の残党としてブルターニュに活躍した農民軍であった。バルザックは、デュマばりのこの歴史冒険小説を生彩をもってかいている。
 きょうのブルターニュのマーキの人々のひいじいさんや大伯父たちが、木菟党について知っており、又その子孫たちがこの物語をもっていることは、いいことだ。人民は、いかにおろかに祖国を愛したかについて学び、またいかに賢く祖国を愛し得るかについて学ぶこと。勇気のつかいみちについて学ぶこと。

        怪物

 ステファン・ツワイクはフーシェを、一人のロマン的人物として定型した。――次から次へと裏切らずにはいられない悲喜劇的性格として。ツワイクによってこういう風に主観化されうすめられたフーシェとバルザックが描いたフーシェとを見くらべると、一驚する。バルザックのは、陰謀を企む人々の背景に、あるときはその前景にチラリ、チラリとフーシェの剛慾さ、あくどさ、無良心。悪計。実に大革命末期からナポレオン時代、つづいて第二帝政時代と三代に亙っての大陰謀家たるボリュームが髣髴とし、湯気を立てている。
 現代欧州作家の誰が、二十世紀の怪物であったヒットラーとその一味徒党を、描くだろう。



底本:「宮本百合子全集 第十二巻」新日本出版社
   1980(昭和55)年4月20日初版発行
   1986(昭和61)年3月20日第4刷発行
親本:「宮本百合子全集 第八巻」河出書房
   1952(昭和27)年10月発行
初出:「歌声よ、おこれ」解放社
   1947(昭和22)年8月発行
入力:柴田卓治
校正:松永正敏
2003年2月13日作成
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