ツルゲーネフの生きかた
宮本百合子

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【テキスト中に現れる記号について】

《》:ルビ
(例)略《ほぼ》

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   (数字は、JIS X 0213の面区点番号)
(例)※[#濁点付き片仮名「ワ」、1−7−82]
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 数年前、私がソヴェトから帰って間もない頃のことであった。或る日何年も会わなかった女の友達が訪ねて来ていろいろ現在のソヴェトでの女の暮しぶりについて話の末、その友達は不図思い入ったように、だけれど、一体ロシアというところは、昔から男より女の方がしっかりしていたところなのかしら、と云って小首を傾けた。
 私は、そんな片手おちのような疑問が何だか可笑しく、どうしてさ、と笑い、わけを訊ねたら、その女友達は遠慮ぶかい性質から、私なんかほんとに不勉強なのだが、と前おきして、ツルゲーネフの小説なんかを読むと、わたし何だかそんな風に思われるんですよ、と答えたのであった。
 昨今ツルゲーネフの名を又きくにつれ、私はその女友達の言葉を思い出した。そしてその短い言葉を含味するにつれ、素朴に表現されたその感想の中には、作家ツルゲーネフ
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