ついてった。
 休憩なのはこっちの室だけだ。ドアのむこうでは、その間に判決を審議しているんだ。
 四十分ばかりして、女裁判官と陪審員が再び現れ、グリーゼルは月十五ルーブリずつの養育費支払いを宣告された。

    (※[#ローマ数字「III」、1−13−23])[#「(III)」は縦中横]

        一

 内地で自転車屋に奉公していたことが、計らず信吉の仕合せとなるときが来た。
 ソヴェト同盟では、一九二八年十月から生産拡張の五ヵ年計画という素晴らしい大事業にとりかかってい、五年間に、つまり一九二八年から一九三三年の秋までに、同同盟の
  (一)[#「(一)」は縦中横] 工業生産額を百八十三億ルーブリから四百三十二億に
  (二)[#「(二)」は縦中横] 農業生産額を百六十六億から二百五十八億に
  (三)[#「(三)」は縦中横] 電力を二十一億キロワット時から二百二十億キロワット時に
高めようという大計画だ。一年一年予算を立てて着々とやっている。
 まだアルハラの山奥で××林業の現場に信吉が働いてた頃、松太がこういうこと云った。
「なんでもモスクワは今大した景気で、おっつけ
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