ば、どこで子供が拍手するか、大いに熱中するか、はっきり分らない。しかし、それを知ることは極く必要です。だから、御覧なさい。これを平静な感情として、ホラ、ここで笑いがはじまりだんだんこんなに高まっている。この笑いは、消えると一しょに好奇心がうごき出し、緊張した瞬間がこれだけつづく。
黒いジクザクな線、ゆるやかな曲線。一つの脚本が、はじまってから終るまでの子供の心の反応波調である。
――御覧なさい、小さい子供は、あまりひどく笑うと、神経が疲れてこういう反動が来る――そのあと注意はこんなに散漫です。
机のまわりにかたまっている子供たちは、珍しそうな顔をして、その表を見守った。
廊下では子供たちが、さっき舞台からきいたインドの子供の歌のふしをうたいながら歩いている。
舞台裏へ行ったら、これからインドの民衆が、イギリス人とブラマンとに反抗して蜂起する大詰の下拵えでいる。黒いインドの子が、赤い旗をせっせと仲間の手から手へ渡していた。
[#地付き]〔一九三一年一月〕
底本:「宮本百合子全集 第九巻」新日本出版社
1980(昭和55)年9月20日初版発行
1986(昭和61)年3月20日第4刷発行
底本の親本「宮本百合子全集 第六巻」河出書房
1952(昭和27)年12月発行
初出:「大阪毎日新聞」
1931(昭和6)年1月5日〜21日号(15日号、19日号を除く)
※「――」で始まる会話部分は、底本では、折り返し以降も1字下げになっています。
入力:柴田卓治
校正:米田進
2002年10月28日作成
青空文庫作成ファイル:
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