ゴルフ・パンツははいていまい
宮本百合子

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【テキスト中に現れる記号について】

《》:ルビ
(例)炬燵《こたつ》

[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(例)「今度[#「今度」に傍点]恋愛するとしたら」
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 これは、いかにもひま人らしい質問です。同時に、一寸ニクマレ口をきかしてもらえば、いかにも婦人雑誌の特徴を発揮した質問です。
 なぜなら、恋愛問題だけをきりはなし、例えば正月、炬燵《こたつ》にあたったり、ハイカラなら、電熱ストーブにでもあたりながら、
「ねえ、今度恋愛するとしたら、どんなのしたい?」
「さあ」
「婦人公論の新年号みた? あるわよ、いろんなのが……」
などという会話をとりかわすのは、一体どんな婦人及彼女の彼氏たちでありましょうか?
 朝六時に、霜でカンカンに凍った道を赤い鼻緒の中歯下駄で踏みながら、正月になっても去年のショールに顔をうずめて工場へ出かける十一時間労働の娘さんをそういう会話の主人公として想像するのは困難です。どうも、ウェーヴした前髪、少くとも銘仙の派手な羽織、彼女の坐っているのはよし古風なコタツであろうとも、座布団のわきには
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