った。
彼女の傍で、息子は次第に大きくなって来た。彼の青年期が始りかけている。――ここで第二巻は終っている。欧州戦争が始る。アンネットは母とし、一箇の自由主義者、理想主義者としてどう行動するであろうか。
私が感興を感じるのはアンネットが今日の進歩せる知識階級の女性の来ているところまで来ている点です。彼女は先天的な精神力によって階級のコムベンションを打破し、家族制度や過去の道徳に反抗している。彼女は自分一人の自由は或る程度まで完うし得た。然し、彼女はこれからどのように発展し、明日の女性に向ってどんな予言を与えるか? 次の時代に役立つどんな生活の新しき拠りどころを見出すであろうか?
有産階級から出たアンネットは、その思想の母体がブルジョアであるアナーキスティックな思想に止るであろうか――これは、作家がそこに止ることを同時に意味するが――更にどの方向に進展するであろうか。私はそこを見ものと思い楽しんでいる訳です。[#地付き]〔一九二七年十月〕
底本:「宮本百合子全集 第十巻」新日本出版社
1980(昭和55)年12月20日初版発行
1986(昭和61)年3月20日第4刷発行
底本の親本:「宮本百合子全集 第八巻」河出書房
1952(昭和27)年10月発行
初出:「婦人公論」
1927(昭和2)年秋季特別号
入力:柴田卓治
校正:米田進
2003年1月16日作成
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