うに切符を買って入って来た、六七人の工場労働者らしい人達と一緒に、まず正面の階段を昇る。
壁に、大きいステンカ・ラージンの絵がかかっている。すこし行くと、プガチョフの物語りを描いたこれも大きい油絵がかかっている。
ステンカ・ラージンやプガチョフは、民謡の中にうたわれ、昔からロシアの勤労大衆に親しまれて来た農民革命家だ。彼等は、封建時代のロシアの辺土から起って、時の支配者に反抗した連中だ。が、一揆的な反抗は成功しないで捕われ、モスクワへ連れて来られた上今も赤い広場にある首切台で、処刑された。
室が、一つ一つ進むにつれ、だんだん面白い写真がふえて来る。有名な十二月党の革命的計画についての調書の一部、処刑された数人の党員の写真、シベリアの流刑地で労役の合間に石に腰かけ、本を読んでいる人々の姿、この辺になって来ると、もう皆はさっさと室を通りすぎることは出来ない、一枚一枚の写真が、ロシアの革命の道を如実に語っている。
一九〇五年の、全国的革命についての記録、写真は特に、強い印象を与える。見物の中には、もう年配の労働者がいて、何度も何度もその一室を廻り、感慨無量らしいのも見える。彼は、き
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