ロシヤに行く心
宮本百合子
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【テキスト中に現れる記号について】
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(例)[#地付き]〔一九二七年十一月〕
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こんど同行する湯浅芳子さんは七月頃既に旅券が下附されていたのだが、私が行くとも行かぬともはっきり態度が決らなかったので湯浅さんも延び延びになっていたのです。然し私もロシヤへは以前から行って見たい希望を持っていたのです。行くことは全く突然決ったので、駒沢新町の家も先日引上げた訳ですが、何もかも短日の中に決めたので多少あわただしい次第です。行く前に私は何も云い度くないのですが――一年半でも三年でも向へ行って帰って来てからなら、多少云い度いことも出来るでしょうし、行って来たものが丸で向を知らぬ人には聞いてもらえる訳ですが――そんな気がするのです。二十七日には最初東京を出発する予定で決めていたのですが、湯浅さんが風を引いているので少し延びたのです。東京は両三日中に出発することになると思いますが、途中、奈良で網野菊子さんに御会いして、それから先に行く湯浅さんに京都で一所になって行きます。朝鮮を経てハルビンに行きそこで外套
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