産後一週間で退院するのが原則になっている。ここではこんなにいい条件で扱われた赤坊が、では退院したらどうなるだろう?
その心配は、またちゃんと別な方法で充される。事務室の一部に、カード室がある。ゾックリ帖簿が整理されてる。ブルジョア国で、これだけ素敵な設備のある産院だったら、そんな帖簿はきっと金持の夫人達の名と多額な入院料を記入した産院利潤帖だろうが、モスクワではそうではない。
一々、産婦の住所、年齢、職業、一般健康状態、姙娠中の状態、出産当時の条件、及生れた赤坊の発育状態、注意事項が書きこまれている。
無事に一週間経って退院となると、この帖簿のなかみ[#「なかみ」に傍点]がカードに書かれ、母子の後を追って、住んでいる町の母子健康相談所か嬰児健康相談所かにまわされる。そこから必要に応じて医者も派遣される。無料で健康相談にのって貰え、事情によっては小児科病院へも入れるように計らって呉れる。牛乳配給所との連絡もある。一リットル二十三哥ぐらいで、赤坊の体に必要な処方で調製された牛乳が貰えるのだ。
「クララ・ツェトキンの名による産院」には、こういう設備で百五十人分の寝台がある。
「われわれ
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