コキ搾られている。
 現に十五六日前にも吾嬬の方のゴム工場で、戦争用毒ガスマスクなどを作る仕事が忙しいため強制残業がつづきすぎ、労働者から頻々と肺病人を出した結果、争議になりかかった。また月島の方のある工場ではやはり軍需品を嫌でも応でも温順《おとな》しく作らせるべく全職工を強制的に国粋的色彩の御用団体にまとめ上げてしまった。トーキーに駆逐されて口が干上ると起ち上った映画従業員のスト等々数えきれない問題のすべては、戦争によって一時的にせよ自身を糊塗しようとし、一切の犠牲をそのために省みないところのブルジョア側の計画遂行の結果であることを考えさせずにはおかない。而もこうした一つ一つの苦しみは必ず工場から台所まで風呂銭まで日々の米、味噌、電車賃まで影響して来る。私たちのぐるりの貧しい婦人は戦争に反対しプロレタリアの世の中にすることを意識的に希望しないまでも、生活の事実に於て熱求せざるを得ない条件の下に置かれているのだ。そこを私達はサークル活動を通じてつかんでゆくべきだ。工場・農村に於ては特に生産者としての婦人を、また生産者の妻や妹を、また出征兵士の家族たる婦人を、街頭サークルに於ては多分その
前へ 次へ
全4ページ中2ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
宮本 百合子 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング