百年の間にロシアのインテリゲンツィアがなした準備、「彼等が労働者の心に社会的ヒロイズムと教養とを与えたから」こそ今、「十月」を招来せしめたと見るゴーリキイには、レーニンが、インテリゲンツィアを新社会の指導力の中心に置かぬことを理解しかねたのであった。彼がこの点について、自身の判断が誤っていたことを実感をもって理解したのは、おそらく一九二八年、ゴーリキイが五年ぶりでソヴェト同盟にかえって来た時ではなかったろうか。その晩年に於て彼が「過去に於て勤労階級の有能な才能は実にしばしば彼らを低く止めて置くところの力に奉仕させられた」と実感をこめて云っている短い言葉の中には、卓抜な人間的・文学的才能にめぐまれつつ民衆の一人として経て来なければならなかったゴーリキイの、すべての時代的な真価と誤りとが率直に含蓄されていると思う。
 マクシム・ゴーリキイは「錯雑した歴史の事件の中に自分自らを見出し、そして全人類的なもの、善なるものを創造しつつある意志に自分の意志を沿わせ、人生の意義をその中にふくむ偉大な創造に障害を与える意志に対立すること」が、作家にとって一番大切なことであることを身をもって示した作家であ
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