た。すると、そこの「喜びのための娘たち」は酔っぱらいながら彼等に、学生や官吏や「一般に小綺麗な連中」に対する悪意のある哀訴をした。それをきくと、「教育のある人達[#「教育のある人達」に傍点]に対する片輪の伝説」で毒されているゴーリキイのパン焼仲間は不可解なものへの嘲笑と敵対心を刺戟され毒々しい喜びで目を閃かせながら叫ぶのであった。
「ウー。教育のある連中は俺達よりわるいんだ!」
こういう仲間に、ゴーリキイは祖母ゆずりの、聴きての心を誘い込むような魅力のこもった話しかたで、よりよい人生への可能の希望を目醒まそうとするのであった。
この時代から、ゴーリキイの心が溢れて詩になりはじめた。それが重々しくて、荒削りなのはゴーリキイ自身にも感じられた。けれども、自分の言葉で語ることによってのみ「自分の思想の最も深い混乱を表現出来るように思われ」しかも、ゴーリキイは、その詩を、彼を「いらだたせる何ものかに抗議する意味で殊更粗暴なものにした。」この生々しく切迫した若者の心持を、彼の教師[#「教師」に傍点]である数学の学生は、さて、どう理解したであろうか。学生はこう云って非難した。
「言葉じゃないよ
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