いるかということについて統計をとったものであった。古典作家ではトルストイが第一であった。現代作家としてはゴーリキイが第一を占め、外国作家ではジャック・ロンドンが最も多く読まれていることが示されていた。そのゴーリキイの作品の中でも「母」が第一位を占めていたのは意味深い印象を与えた。「母」は知られている通り、ロシアの民衆の歴史にとって忘れることの出来ない一九〇五年に書き始められたものであって、この作品に於てゴーリキイは始めて、確固とした階級性を自身の作品に導き入れた。そしてその後に続いた苦しい反動時代を通して民衆に刺戟と鼓舞を与えた。作品としていろいろ批判さるべき点もあるが、ゴーリキイがその時代に「母」をロシアの大衆に贈ったということは、全く、レーニンが簡単で含蓄のあるほめ言葉を与えた通り「時宜に適った」功績であった。
その作品がおよそ二十年後の当時にあってもなお一番青年に愛されているということは私の心を動かした。面白いことにこの「母」を、プレハーノフが大変悪く批評したことである。プレハーノフはこの作品が発表された当時、既にメンセビキの頭領としてはっきりレーニンの党と対立していた。プレハ
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