マクシム・ゴーリキイについて
宮本百合子

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【テキスト中に現れる記号について】

《》:ルビ
(例)生《き》のまま
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 マクシム・ゴーリキイは一八六八年、日本の明治元年に、ヴォルガ河の岸にあるニージュニ・ノヴゴロドに生れました。父親は早く死に、勝気で美しい母はよそへ再婚し、おさないゴーリキイは祖父の家で育ったのですが、この子供時代の生活が、どんなに荒っぽいおそろしいものであったかということは有名な「幼年時代」という作品に生き生きと描かれています。残忍な生れつきの祖父と、財産あらそいばかりしている小父たち。たちのわるい残酷ないたずらをするのが日課であるいとこたち。ゴーリキイの不安な毎日の中で、たった一つのよろこびと慰めとなったのは、おばあさんでした。昔話が此上なく上手で、人間は、辛棒づよく正しく親切をつくし合って生きるべきものであることをいつもゴーリキイ対手に話してきかせたこの太った大きいおばあさんは、ゴーリキイの生涯にとって一つの宝のような人でした。
 火事で祖父の家がまるやけになり、すっかり零落してから、ゴーリキイは愛するおばあさんと自分のためにパンを稼がなければなりませ
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