いてくれた古橋君として登場させるわけだった。
 練習のはげしい水泳選手として、寮生活の食事では無理だけれども、大体それでやっていると、古橋君はあっさりした話しぶりだった。日大は、古橋さんというポスターのおかげで、大分便宜を得ているのだし、同窓生たちにとっては、われらの青春のチャンピオンであるわけだから、みんなが協力して、せめて消耗にふさわしい食事ぐらい何とか工夫はできないものかしら、というわたしの言葉に、古橋君は、さあ、とただ笑っていた。
 その後、しばらくして各大学における運動部の内情が、具体的に描き出された雑誌記事があった。私立大のスポーツ・ボスが従来どんなにチームをくって来たか。そのために選手たちのスポーツマン・シップは危機にさらされがちであること、及び、各大学の運動部は、その学校の精神水準としては、社会的認識についても素朴な低い面を代表しがちな傾向について書かれていた。
 またしばらくすると、経済逼迫のために、古橋その他の有名選手たちが夏休みのアルバイトとして、銀座辺で漬物屋の店をひらくとか、そういう店に働くとかいうニュースがでた。そのときとられた写真の中でも、古橋君たちはやっ
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