不足から、農民の消耗品をつくる軽工業生産を活溌にやれない。すると農民はブツブツ云い出す。「俺らが都会を養ってやってるのに、ハア、着るもんも穿くもんも工場じゃ拵《こしら》えね。こっちも、働くの控えべ。」こうなると、都会と農村との経済状態はイタチゴッコに消極化し、衰弱するばかりだ。
 ソヴェトの社会主義的生産組織は、まだこの鋏の二つの刃を、強固に結合さすことに成功する程発達はしていなかった。
 一方ソヴェトの外は、どんな状態か? 地球六分の五を占める資本主義国家は、ソヴェトが邪魔だ。それは一九一七年来、わかっている。たった一つの、社会主義共和国家ソヴェト・ロシアに向って、行き詰った資本主義国家が侵略的野心を抱いていることは、年とともに明かになっている。
 第一ロシアは天然資源が実に豊富だ。資本主義国家が目下苦しんで互にせめぎ合っているのは何か、原料の不足と市場の狭隘ではないか。先ず経済封鎖でソヴェト社会内部にあるいろんな政治的偏向を突ついて、少しごたごたでもしたら、それを機会にワーッと帝国主義連合軍をなだれこまそう。帝国主義の侵略主義者たちの平凡な思わくだ。あの大きいロシアの土地をわけどり
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