ャルスキーが、彼の歴史的場所を、ズブノフに譲った。芸術院が改造されピクサーノフ教授、サクリーン教授などが退いた。
 この灼熱的な客観的情勢の中で、ソヴェト文壇にあるいろんな作家団体が愈々その階級的立場を大衆によって批判されることになったのだ。

      「ラップ」の社会主義的行軍
       (1)[#「(1)」は縦中横] ――「同伴者《パプツチキ》」の没落――

 ソヴェト・ロシアは働く人民の国だ。
 目下社会主義の社会を建設する過程にある。
 また、世界で、ただ一つプロレタリア革命に勝利した社会主義社会として、他の資本主義社会と、全くちがった社会的な基礎の上に立っている。
 ソヴェトの文学運動の中核が、プロレタリア文学にあるのは、ソヴェト社会生活の必然である、また、階級の生活的な現実を芸術に表現するものとして、その階級文化の所産・武器としてソヴェト文壇に並存するいろんな流派を指導し発展の方向を示すのがプロレタリア作家団体であるのはわかりきったことだ。
 一九二五年に、現在のロシア・プロレタリア作家連盟(ラップ)が全ソヴェト・プロレタリア作家連盟(ワップ)という名称で、第一回の大会を開いた。ルナチャルスキーやブハーリンが列席して演説し、ロシア共産党(ボルシェビキ)の文学に関するテーゼを説明した。
 この時、既にはっきりと云われた。プロレタリア作家たちこそ、解放された光栄ある労農階級のものだ。たとえ、現在「同伴者《パプツチキ》」作家たちの業績がより目立っているにしろ、彼らは社会主義社会の発展につれて変化してゆくものだ。現在は幼稚だとしても、プロレタリア作家の未来は大きい。前進するプロレタリア階級の文化とともに、益々いいものが書けるようになる。ルナチャルスキーは、彼の永い演説の最後を「プロレタリア作家万歳!」という声で結んだ。
 同時にプロレタリア文学の発展と完成へ向っての鍛錬は、まったく自力でプロレタリア作家の努力によってされなければならないことも、明瞭に云われた。レーニンは云った。「文学は党の文学とならねばならぬ。」それは、党の方向に一致した階級の文学でなければならぬという意味だ。党のテーゼは言明している。党は文学のいろんな流派が持っている社会的階級的内容を、正確に識別するが、決して、その中の一つの傾向だけに党を結びつけることはしない。「全体としての文学を指導しても、党は或る一定の文学的分派を支持することは出来ない。」「党はあらゆる異った団体及び潮流との間の自由な競争を宣言せざるを得ない。他のあらゆる解決は役所的、官僚的な虚偽な解決となるだろう。」
 つまり、党は、プロレタリア作家団体だからと云って、その団体ばかりを特別エコヒイキはしないぞ。ソヴェト同盟内の革命的プロレタリアートと党とは、過渡期のソヴェト社会内のあらゆる異分子と闘い、或るときはそれをボルシェビキ的な指導によって、発展させることによって、実践によって、社会主義社会建設の道を前進している。プロレタリア文学の発達の道も同じだ。多くの流派の間で揉まれ、試され、闘いつつ、自身の文学的実践で自分の道を勝ちとれ。そういう意味なのだ。
 階級社会の現実につよく根ざして成長するものでなくて、権力によって調節されたり、特権を利用しなければ権威のないような文学的見地に立つなら、プロレタリア文学は発展も成長もしないという意味のことを云っているのだ。こういう、党の文学に対する態度が、正当であるのは誰でも認めるだろう。
 ソヴェトに於いて一九一七年から二一年までは、時々刻々が燃え立つ革命の年であった。
「十月」と同時に散兵して、いろいろな文学の陣営についた作家たちは、めいめいの場所で、ソヴェト文学史の上に、意味ある仕事をした。
 新経済政策以後、五ヵ年計画実施までの六年間を一口に云えば、ソヴェトのプロレタリア文学にとって一種の模索時代だった。勿論彼等は勉強していた。主として技術向上のための勉強をやっていた。何故なら、革命当時の、生活の火がペンに燃えついているような作品はもう書けない、「十月」は歴史的に扱われなければならず、「今日」は複雑だ。「十月」を描くにしろ、それは緻密な分析と綜合とをもって注意ぶかく、展望的により高い永続性をもつ芸術的技術で書かれなければならない、立体的にそして現実的に。――革命当時のプロレタリア文学の作品がもっている類型を揚棄しなければならない時期になった。プロレタリア作家が古典や外国文学を勉強していたその数年間に、「同伴者《パプツチキ》」の作家たちはナカナカ仕事をした。左翼のパプツチキ作家団体の中でも、マヤコフスキーを主とする未来派出の「左翼戦線《レフ》」または「構成派《コンストラクチビスト》」の作家、或はプロレタリア団体の中でも左翼的で歴史も古い「鍛冶屋
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