家に対し、女と肩を並べストライキと小作争議とで闘い、勤労階級と搾取階級の対立がはっきりして見ると、女に対する見方が変って来た。成程、これまでは資本家、地主のからくり[#「からくり」に傍点]に騙されていた。本当に勤労大衆の解放のため先頭に立って闘っている共産党[#「共産」に「××」の注記、底本の親本「河出書房 宮本百合子全集」で伏字を起こした個所]のスローガンどおり機械は労働者の手に、土地は農民に! そして同じ働きをする以上男も女も同じ政治上の権利をもち、同じ賃銀をとるのが当然だ。そうしてこそ始めて仕合わせな毎日の生活が男にも女にも来ることがわかった。
 その日のために、ロシアのプロレタリアートと農民は、監獄、銃殺、流刑と、あらゆる迫害を徹して闘い抜き、遂に一九一七年十一月七日、働く者の国、プロレタリア独裁のソヴェト政権を確立したのです。
 この地球はじめての人間らしい憲法がきめられた。労働婦人としての女が本ものの権利をもった。
 ソヴェト同盟では男も女も同じ労働《はたらき》に対しては同一賃銀を。そして社会主義社会のためにつくす点は同じだから男も女も満十八歳で、ソヴェトに選挙され、選挙する権利を与えられています。(但し革命までのブルジョアの残りや坊主などは、新しい社会を造るソヴェトへの選挙権は与えられていません。)
 ソヴェトの選挙は二年ごとに行われます。大抵三月頃、寒いモスクワではまだ雪の下でやっと木の芽がふくらみかける頃行われるのですが、その頃の町の景色の活き活きとして楽しげなことと云ったらほんとに皆さんに見せたい!
「働かざる者は食うべからず」という言葉の刻まれている高い高い塔の立っているソヴェト広場では、赤いプラカートが風に翻り、
 選挙へ! 一人のこさず!
 勤労大衆の代表と、社会主義社会建設の闘士を選べ!
と読める。
 工場の労働者クラブでは、毎晩のように選挙についての討論会が行われる。髪をきりっと布で包んだ婦人労働者も熱心に討論する。
 農村でも、話はソヴェト選挙にあつまって、農村を、集団農場を本当にうまくやって行くにはどんな人間を選び出したらいいかと討論する。
 村や町のソヴェトから、演説者が来て、どういう人を選ぶべきかを教える。
 勤労婦人は、ソヴェト選挙にあたって特別に本気です。何故なら、勤労婦人の現実の生活を身軽に、幸福にする各区の無料病院、託児所、診療所、母子健康相談所、共同食堂の経営などは、みんな市ソヴェトの保健部の仕事と関係があります。
 ソヴェト政権は、勤労婦人に出産前後四ヵ月の給料つき休暇と、月給の半額までの出産支度金と、九ヵ月間の牛乳代まで出してくれる。
 それほど母と子との権利を守られていても自分の住む区に、託児所が足りなかったり、母子健康相談所の設備が足りなかったりすれば、何にもなりません。
 小学校の問題もある。ソヴェト同盟では全額国庫負担の小学教育を実行しようとしています。学用品から弁当、寒いところだから必要な防寒具まで小供のためには国家が出そうとしている。母親として、誰がこのことに冷淡でいられましょう!
 住居のことがある。ソヴェト同盟ではどしどし新しい労働者住宅が建つ、家賃が年々下る。(大体家賃、水道などは一ヵ月にとる月給の高によってきめられます)自分の区にも、便利な住宅がいる。
 それらの仕事を実行するのはソヴェトです。勤労婦人が、熱心にソヴェト選挙に参加し、投票もすれば、自分が選挙されたとき全責任をもって働くわけもここにある。
 プロレタリアのソヴェト政権を守り、闘って来たからこそ、五ヵ年計画は実現され、失業者というものがソヴェト同盟にだけはなくなった。(日本の失業は三百万人、ドイツは六百万人、アメリカ七百万人です)七時間労働です。賃銀はもとの三倍になった。毎年一ヵ月勤労者は有給休暇をもらって元は大ブルジョアの別荘や離宮だった景色のいい「休みの家」へ行ける。
 農村で、集団農場のクラブへさえ集まれば、モスクワからのラジオが聴ける。映画が見られる。診療所が出来た。学校が出来た。託児所と共同食堂が出来た。
 これらすべてはどこから来たか。勤労階級の解放されたソヴェトの世の中だからです。
 ブルジョア地主の日本では普選と云っても女はのけもので、特別な投票所をこしらえ、しかも投票の日に労働大衆に公休はよこしません。
 ソヴェトの選挙は、相当大きいところではみんな各工場の中で大衆的に行われます。つまり職場でやるのです。これも理屈にあっている。
 ソヴェト同盟の勤労婦人は、ところでどの位の割でソヴェト役員に選ばれているかと見ると、年々ふえている。市ソヴェトの例だけとってもこうです。
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一九二二年――九分八厘
一九二五年――二割
一九二七年――二割一分四厘
一九二九年――
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