家、画家、映画労働者、劇場労働者、みんな出かけたが、技術家揃いだから、自分たちの乗って行く列車だって無駄にはしない。三等列車の外っ側を、溌溂たるプラカートや、絵で装飾して、所謂宣伝列車を仕立てて何百露里というところをころがって行った。
集団農場にはクラブがある。そこで人形芝居、即興劇その他で、刻下の社会的問題を芸術化して農民に見せるのだ。同時に、農村ではどんな芝居がよろこばれ、要求されているかということを専門的な立場から研究する。
――聞いているだけでも一寸わるくないな。儲けばっかり考えている会社につかわれて映画をつくったり、芝居しているのとはちがいがひどすぎる。だが、検閲はどうだい? 喧しいんだろう? 築地の左翼劇場では、警官が出張して台本と首っ引で坐っているよ。あの通りを行ってるんじゃないか? それに近いような噂だぜ。
――……実にデマが利いているんだなあ。
――嘘かい?
――ソヴェトのプロレタリアートや彼等の党は偏執狂じゃないよ。あらゆる人間の才能を十分発揮させようとしているのだ。ただ、ソヴェトは今特殊な歴史的過程を生きつつある。
緊張した社会主義建設期にある。終
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