常に前進するソヴェト社会の更に最前線へ出ようと努力していた彼の一生を、実に正直に語っている。
彼はそこから自分を解放することに成功しなかった個性的才能の型に圧しつぶされて自殺しながら、自分をのりこえ、階級の芸術家としての自分を生きこして邁進するソヴェト文化の勝利に向って万歳を叫んだだろう。わたしはそう感じた。
だから、「南京虫」にある彼の観念的な破綻にしろ、わたしに軽蔑を感じさせるより先に、ソヴェト社会の発展の足どりの猛烈なテンポを痛感させた。
作者マヤコフスキーにとって「南京虫」や「風呂」は芸術家としての飛躍の最後の句読点《ピリオード》だった。けれども、演出者メイエルホリドにとっては、五ヵ年計画とともに前進すべき仕事の第一歩のふみだしだ。
これから、彼が並々でない才能を現実に向ってどう立てなおし、真実のプロレタリア演劇として必要な現実性を把握してゆくか。機械、科学、生産を、彼の云う「フォードの美」をどうプロレタリアの建設的実状の中から掴みなおすか。ここに大きい未知数がある。
マヤコフスキーの作品と前後して、プロレタリア詩人ベズィメンスキーの「射撃《ウィストレル》」がメイ
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