切符代のする帝劇かどっかの舞台で古典的なバレーの型を演じることと、二百万の失業者をふくむ日本のプロレタリアートとの間に、どんなつながりがあるであろうか。
(後で、この計画は中止された。理由はよくわからない。しかし、クリーゲルの芸術が古典的すぎることも再吟味されたらしい話であった。)

       メイエルホリド劇場の三晩

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 ソヴェト・ロシアの劇団で、モスクワ芸術座の次に、世界にひろく知られているのはメイエルホリド劇場だ。
 日本でも、「|吼えろ《リチ》! 支那《キタイ》」「D《デー》・E《エー》」などはメイエルホリド劇場の模写が上演された。
「吼えろ! 支那」は、なかなか宣伝的効果があった。中国を植民地化している帝国主義の国の権力と、中国の勤労人民の姿がよくわかるばかりでなく、メイエルホリドの若い俳優たちは、アメリカ人、イギリス人の真似がうまい。言葉の調子にしろ、身振りの癖にしろうまい。もとから紹介されてる人体力学《ビオメカニズム》とともに、これは確にメイエルホリド劇場の特徴の一つだ。
「吼えろ! 支那」だって、帝国主義国の海軍士官たちが真に迫っていて、思
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