からね 次のが十二台 あとは一台二台の程度です」
「僕は大阪にいいんです だから大抵大丈夫だろうと思うんですが――」
「月給七十円、べん当代30銭 足代が出るから助ります 朝出るとき一円ぐらいもって行ったって足が出ますからね そうすると書き出し(伝票)で貰うんです」
一二年先へ先へと見とおしをつけなけりゃ困りますからね、真剣ですよ。
三千円ぐらいなら出すひとがある。
「日日に林房雄が実業家のことを書いているんですね、
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一寸金がいる
どの位だ、五万円までなら出す
[#ここで字下げ終わり]
って云っているんで、こんなひともいるのかなアと思いましたよ」
聞いている方 それが本当の話だと思い だが、林がと変に思い
「林が? 林が出すって云ってるの?」
ときく
「いいや 誰だか」
「ああ、小説なの!」
読んだひとには其が小説であるということなどぬきに、五万円迄は出すという そのことが大うつしになったのである。
その焦点のきつさの驚き。
私立大学出の程度の実業家というものの経路、
自身の過去の人生経験に対する自信と同時にそういう休みない事情(資本ケイトウによっ
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