からね 次のが十二台 あとは一台二台の程度です」
「僕は大阪にいいんです だから大抵大丈夫だろうと思うんですが――」
「月給七十円、べん当代30銭 足代が出るから助ります 朝出るとき一円ぐらいもって行ったって足が出ますからね そうすると書き出し(伝票)で貰うんです」
一二年先へ先へと見とおしをつけなけりゃ困りますからね、真剣ですよ。
三千円ぐらいなら出すひとがある。
「日日に林房雄が実業家のことを書いているんですね、
[#ここから2字下げ]
一寸金がいる
どの位だ、五万円までなら出す
[#ここで字下げ終わり]
って云っているんで、こんなひともいるのかなアと思いましたよ」
聞いている方 それが本当の話だと思い だが、林がと変に思い
「林が? 林が出すって云ってるの?」
ときく
「いいや 誰だか」
「ああ、小説なの!」
読んだひとには其が小説であるということなどぬきに、五万円迄は出すという そのことが大うつしになったのである。
その焦点のきつさの驚き。
私立大学出の程度の実業家というものの経路、
自身の過去の人生経験に対する自信と同時にそういう休みない事情(資本ケイトウによってクビになる事)から来るあせり[#「あせり」に傍点]、性格的よわさ ずるさ[#「ずるさ」に傍点]の自覚
[#ここから1字下げ]
〔欄外に〕
○「ポケットへさいそくのハガキを二三枚入れている位だから誠意がないことはないんです」
○湯浅にホンヤクをたのむ パルプのこと十五円という ああ十五円でさようならか、と思った。
初め、調査部にひまな人がいたらやらせてくれないか、よし、それを宍が、五円ぐらい貰えると思い、じゃと湯にたのむ、月給が半年なくて丸ビルにいるつとめ人の心理
[#ここで字下げ終わり]
三等の旅費が出る、
○「途中下車も出来ますしね
この間静岡へ行ったときも熱海へまわって来ました もう二三遍行きましたよ」
藤山雷太の息子の藤山×一郎が日本レジスターの新工場を大仁にこしらえたんで、そこへタイムレコーダー二台もって行って置いて来ちゃったんです
六月ぐらいになったら売れるでしょう
[#ここから1字下げ]
〔欄外に〕
○タイムレコーダー 五十人以上百人以上のところでつかう
人のキライなものをうってるんですから 成績が上らないんです。そのために専務が十何年か前よそからひっぱって
前へ
次へ
全3ページ中2ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
宮本 百合子 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング