いに迷った末、終に私の此から申そうとする、最も時間に於て新らしい一つの常套的生活に納まって仕舞います。其は、厨川白村氏が、私の云い度い心持を最もよく表現した文字で書かれた、“Against the Convention of Unconvention”を主張する一群なのでございます。
(其六)
C先生。
今日の私共を囲繞する社会は、「英雄と神との時代」を過ぎて居ります。
社会の有機的組織の緊張は、其裡に生存する各箇人に、公衆との相互関係を痛感させます。物質的生存の不安に対する暗示も其に与って力ある事でございますが、現代の公衆の箇分子は、相互に緊縛した相対的関係を忘れる事が出来ません。そして、社会の有機的組織は、箇人の種々雑多な箇性に依って構成されるものではあっても、若し自分が比較的安易に、且つ好結果を得ようとするのには、どうしても、其の相互関係に何等の不調和をも起さない程度に、自らの箇性を馴致する事を、意識無意識に必要と認めるようになります。米国の箇人的教育は、各種の箇性を重んじながら、其の功利主義の伝統的暗示、或は宣伝に依て、箇人的気質が、公衆の不文律に順応
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