的称嘆とその事との間には大きな差の在る事でございます。或る輝きに盲目にされて、夢中に双手を挙げて叫ぶ感激は、純粋な批評と申す事は出来ません。感激の強度と、批評的価値の高下とは綿密に考えられなければならないものではございますまいか。
 けれども、私共は先ず、此の催眠させられる程烈しく湧き上る憧憬は、如何なる背景をその後に持って居るか考えなければなりません。其程の恍惚の歓びは、何処から来るのでございましょうか。崇拝者の多くは、その程度の差こそあれ、悉く現今の日本女性に、満たされない心を持った一群であると申す事が、何よりも雄弁にその原因を物語って居るのでございます。
 現代の日本女性に就て公平に考えて見ると、或種の人々の考えて居るように、楽観すべきものでも無く、或人々の只一口にけなす程価値の無いものでもございません。教育家の一部が易々諾々として教案を草し、その教案によって百年一日の如く恐ろしい厭怠の裡に所謂良妻賢母を説いて居る、その偽瞞の現状維持は、強いても日本女性を楽観して居ります。然し、其は軈《やが》て彼等のギロチンになりますでしょう。若い女性、従来若いと云えば、直ちに幼稚な頭脳、浅い判
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